2017年3月16日木曜日

ガイドツアー「国指定史跡、春の夏島貝塚見学会」

3月16日(木)、NPO法人よこすかシティガイド協会主催のガイドツアー「国指定史跡、春の夏島貝塚見学会」に参加してきた。縄文時代から太平洋戦争末期までの夏島遺構群が見学でき、楽しい一日であった。

夏島の概要
①現在の夏島は、横須賀市北東部の埋立て地内にあるが、以前の夏島は、追浜沖に烏帽子巌を挟んだ標高52mの島として存在していた。
②明治21年~明治22年(1888年~1889年)、陸軍の東京湾要塞を構成する沿岸砲台として夏島砲台が建設された。
③その後、夏島は海軍の管理となり、海軍用地造成のため、明治45年(1912年)に周辺の埋立てが始まり、大正7年~15年(1918年~1926年)には、横須賀海軍基地造成のため、夏島を取り囲む大規模な埋立てが行われた。夏島は陸続きとなり、烏帽子巌は消滅した。
④太平洋戦争末期、横須賀海軍航空隊基地の緊急戦備施設として、夏島に地下壕が建設された。
⑤ここ夏島には、縄文時代の夏島貝塚、明治期の東京湾要塞・夏島砲台跡、大正から太平洋戦争末期までの横須賀海軍航空隊基地・地下壕遺跡が残されている。また、伊藤博文らが明治憲法を起草した地でもある。
⑥夏島に隣接する夏島都市緑地には、3基の東京湾第三海堡遺構が展示されている。

京急追浜駅・駅前商店街

夏島周辺追浜観光マップ
「NPO法人アクションおっぱま発行絵地図」より転載

1 縄文時代の夏島(夏島貝塚)
夏島には、約9,500年前の縄文時代早期の夏島貝塚が存在する。第一貝塚と第二貝塚に分かれ、昭和47年(1972年)、島全体が国の史跡に指定された。また、出土品についても、平成10年(1998年)、国の重要文化財として指定された。
夏島貝塚入口(普段は立入禁止)

夏島第一貝塚(島部南側斜面)

夏島第一貝塚の貝類

第二貝塚(島部中央)

2 明治時代の夏島(東京湾要塞・夏島砲台建設)
夏島は、以前追浜沖(長浦港沖)に烏帽子巌を挟んで、標高52mの島として存在していた。明治21年~22年(1888年~1889年)に陸軍の東京湾要塞を構成する沿岸砲台として、夏島砲台が建設された。
横須賀明細一覧図(明治16年版)
夏島と烏帽子巌が描かれている。当時は陸続きでなかった。

夏島砲台レンガ造り隠蔽部

 レンガ造り隠蔽部内部の様子

臼砲砲台跡

3 大正時代の夏島(夏島周辺埋立てと横須賀海軍航空隊基地建設)
3-1 横須賀海軍航空隊基地(追浜海軍航空隊)
大正7年~15年(1918年~1926年)、島の周囲が埋立てられて、横須賀海軍航空隊基地(追浜海軍航空隊)が建設された。烏帽子巌は消滅し、夏島は陸続きとなった。
追浜海軍航空隊
横須賀中央地区「町の発展史3」より転載

「海軍航空発祥之地」碑(貝山緑地)

「豫科練誕生之地」碑(貝山緑地)
昭和5年(1930年)、横須賀海軍航空隊に「飛行予科練習部」(通称:予科練)が設置された。15~17歳の少年達が、3年間に及ぶ操縦員としての英才教育を受けた。昭和14年(1939年)、霞ケ浦の地に移転した。

「烏帽子巌之跡碑」
日産自動車第3地区工機工場横にある。

3-2 明治憲法起草地記念碑
伊藤博文らが明治憲法の起草をした夏島の別荘跡地に、大正15年(1926)11月、明治憲法起草地記念碑が建立された。昭和50年(1975)4月に、200m離れた現在地(夏島貝塚入口)に移された。碑の基石は、明治憲法全76条を示す76個の御影石からなり、縦横22尺2寸1分1厘(約6.7m)の大きさは、憲法発布の日、明治22年(1889)2月11日を表している。

伊藤博文別荘地跡(日産自動車第3地区工機工場内、栢木付近)

明治憲法起草地記念碑(夏島貝塚入口)

4 昭和時代の夏島(地下壕跡)
太平洋戦争末期、横須賀海軍航空隊基地の緊急戦備施設として、夏島に地下壕が建設された。地下壕は、3層構造からなっている。第1層は、飛行機格納庫用の大型隧道で、第2層は標高20m付近に坑口があり、第3層は標高42m付近に坑口がある。
夏島地下壕配置図(ガイドツアー配布資料より転載)

地下壕1層(地表)

地下壕1層から地下道2層に向かう急階段梯子

地下壕2層(標高20m)

地下壕2層から地下壕3層に向かう急階段坂道

地下壕3層(標高42m)

地下壕3層から頂上(標高52m)に向かう急階段坂道

5 現在の夏島周辺
横須賀海軍航空隊基地があった広大な跡地には、日産自動車工場が建てられ、昭和36年(1961年)から、本格的自動車生産工場として操業を開始した。
現在の夏島周辺航空写真(Googleマップより転載)

貝島緑地展望台から見た夏島(手前は日産自動車工場群)

日産自動車第3地区蔵置場

日産自動車総合研究所

6 東京湾第三海堡遺構展示場
第三海堡は、東京湾航路の安全確保のため、平成19年(2007年)に解体撤去され、4基の遺構が陸揚げされた。夏島都市緑地には、3基(観測所、探照灯、砲台砲側庫)が展示され、残りの1基(大型兵舎)は、平成町うみかぜ公園で展示されている。
東京湾浦賀水道航路の第一、第二、第三海堡
追浜の歴史遺産見学しおり「東京湾第三海堡遺構物語」より転載

陸揚げされた第三海堡遺構(4基)説明図
追浜の歴史遺産見学しおり「東京湾第三海堡遺構物語」より転載

6‐1 夏島都市緑地
東京湾第三海堡遺構展示場
観測所・砲台砲側庫・探照灯

観測所

砲台砲側庫

探照灯

6‐2 平成町うみかぜ公園
大型兵舎

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