2018年9月20日木曜日

「北海道ブラックアウト」原因究明へ

 2018年(平成30年)9月6日3時7分、北海道胆振東部地震(震度7)が発生し、全道が停電するという前代未聞の「ブラックアウト」現象が起きた。「ブラックアウトの発生原因は?」、「北海道以外は大丈夫?」。数々の疑問が沸く。読売新聞に、「ブラックアウト」の貴重な記事が掲載された。

 以下の「説明文」、「画像」は、読売新聞朝刊号(平成30年9月20日)からの転載である。

 経済産業省などは19日、北海道のほぼ全域が停電した「ブラックアウト」について、本格的な原因究明に乗り出した。これまでの調査では、6日午前3時25分のプラックアウト直前の1分間に、苫東厚真火力発電所1号機(出力35万kW)の停止などが連鎖的に起き、プラックアウトに陥ったことが判明している。
 まず3時7分に地震が発生し、直後に苫東厚真2号機、4号機が緊急停止。 一方、1号機は出力が10分の1程度に低下しながらも、発電を続けた。しかし、ブラックアウト直前、1号機も停止した。
 経産省はその原因について、地震に伴うボイラー配管の損傷で蒸気が漏れ、出力が低下したとみている。1号機の停止後、知内、伊達、奈井江の各火力発電所も後を追うように停止し、電力の供給量(発電量)が急速に減少し、電力需給のバランスが崩壊した。
 調査の焦点となるのは、1号機の停止後、北海道電が一部地域を強制的に停電させて需要を減らし、需給バランスを回復させようとしたのに、機能しなかった原因だ。
 電力は需要と供給のバランスが崩れると、周波数が乱れて発電機が損傷する恐れがある。このため、強制停電は地震発生後に2回実施されており、46〜47Hz台に急落した周波数を通常の50Hz付近まで回復させることに成功していた。
 1号機停止後の3回目の強制停電によって周波数を回復させることができていれば、道内全域に停電が広がる事態をぎりぎりで防げた可能性がある。経産省などは、この強制停電がどう機能したかを検証する。
 1回目と2回目の強制停電で一時的に回復した周波数が、なぜ再び乱れたかも検証課題となる。
 経産省は、地震に気づいて目を覚まし、電気をつける家庭が急増したことで電力消費量が一気に増え、需給が逼迫していた可能性があるとみている。北海道電は、苫東厚真以外の火力発電所の出力を上げるなどして需給バランスを安定させようとしたが、周波数は激しく変動した。
 ブラックアウトに至る経緯について、北海道電の対応に問題がなかったかも検証の対象となる。経産省幹部は「現時点で人為的ミスは把握していない」としている。経産省の認可法人「電力広域的運営推進機関」が設置した検証委員会は今後、当時のデータなどをもとに、適切な指示が出されていたかなどを検証する方針だ。

「北海道ブラックアウト」までの流れ
地震で停止した火力発電所
ブラックアウトなぜ起こる?
Q 北海道のブラックアウトで焦点となった周波数とは。
A 1秒間に電気がプラスとマイナスに入れ替わる回数のことだ。単位は「Hz」で、北海道を含む東日本のほとんどの地域では回数が50回なので、周波数は50Hzだ。今回の地震では、発電所の相次ぐ停止などで、周波数が50Hzよりも大幅に下がった。
Q 周波数が下がるとはどういうことか。
A 自転車にたとえると、5人で1台の自転車をこいで坂道を上っているのに、1人がこぐのをやめれば、他の人の負担が大きくなり、回転が遅くなる。発電機も同様で、大きな出力を持つ発電所が止まると、他の発電所の負担が重くなり、周波数が低下する。これは発電機の損傷につながる。
Q どう対処するのか。
A ルートを緩い坂道に変更すれば、こぐ人が減っても、負担は軽くなる。今回の地震では、一部地域を強制的に停電させて需要(消費量)を減らし、残っていた発電所の供給力(発電量)に見合うようにして、負担を軽くした。しかし、最後はこれらの発電所も持ちこたえられなくなり、 自ら運転を停止してブラックアウトとなった。

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